「いつもの日」
いつも、水槽を眺めていた。
魚たちとともにすごして、魚たちとともに楽しんだ。
いつしか魚たちは、私の友になっていたのかもしれない。
いつも、水槽を眺めていた。
いつも朝にはおきてきて、
いつも昼にはエサを食べ、
いつも夜には寝ていた。
今日もそんないつもの日だった。
でも、
一日一日は、いつも、いつもじゃない。
自分の時間。相手の時間。
二度と同じものは来ないんだ。
だから、自分の時間を大切にしたい。
そして、相手に別れを告げる日も近いのかもしれない。
それは分からないんだ。
だから、せめて一日一日を大切にしてあげたい。
いつもの日じゃなく、毎日を。
違った一日を。
違った毎日を。
違った生活を。
違った愛情を。
失う前に、追いかけてほしい。
今ならまだ間に合うはずだから。
いまからでもいいから。
命という尊いものを失う前に、
それに感謝したいから。
あなたも、一日一日を、ベストを尽くしてほしい。
マニュアル化された毎日を生きるようになる前に。
大切なものを忘れてしまう前に。
でも、もう失ってしまった。
戻らない小さな命を。
いつもの日の間の谷間の中で、
静かに、何も言わずに失ったもの。
いつも、あなたは命を、生命を大切にしていますか。
命を、静かに忘れていっていませんか。
自由におぼれて、自分を見失っていませんか。
なくしてしまったもの。
でも、せめて、忘れないでほしい。
なくしたものを。
水槽の蜜柑色の影。
いつも見えるその影が、
今日は見えなかった。
それは、水草の上で息絶えてしまっていた。
彼女は私の中で幸せだっただろうか。
朱雀 平成一八年九月五日 永眠。
もう二度と見れなくなってしまった、その美しい蜜柑色。
元気に泳ぎ回り、私にエサをねだっていたその姿は、もう見ることはできない――
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